【新人育成】OJT担当が新人(後輩)のエンジニアと接する時の重要なポイント




私は新人エンジニアの育成担当としてトライアンドエラーを繰り返してきました。新卒入社の後輩が配属されてからおよそ10ヶ月のあいだOJT担当として育成をしてきましたが、後輩が管理職の間で高く評価されていることが最近分かり嬉しい限りです。

もともと彼は情報系学部出身ではないし、理系出身でさえありませんでした。しかし、今では開発業務を自走しながら行えるまでに成長しました。

元々彼は優秀だったので、別の人がOJT担当でも同じ結果になっていたかもしれません。それでも少しは彼の成長に貢献できたのかな…と若干の自己評価を持っています。

そこで、今回は新人エンジニアとの接し方について私が感じた重要な点を紹介したいと思います。

目次

(前提の部分)新人が早く成長していく状態とは?

接し方について紹介する前に、前提の部分をお話しようと思います。

OJT担当として最初に立てるべき問いは「どのような状態になれば新人はぐんぐん伸びていくのか?」というものであると考えています。この問いに対して私は「新人が仕事に面白さを見出している状態」と考えています。

なぜかというと、仕事に面白さを感じているときは、勉強やアウトプット作業(実際に開発をしてみる, etc…)が苦にならないからです。後輩が「仕事が楽しい!」と感じているときは、不足していると感じる知識や興味がある分野に関することを勝手に自分で調べて、勝手に成長していくものです。

エンジニアの仕事は専門職ですから、専門的な知識を大量にインプットする必要があります。しかし会社は教育機関ではないので、何ヶ月もつきっきりで教育を行うことは出来ません。必然的に、自分自身で知識を吸収してもらう必要があるのです。

もちろん、OJT担当は育成担当ですから「教えるのがうまい」というスキルも求められるでしょう。しかし、OJT担当として直接教えることができる知識の量なんて、必要なインプット量のほんの僅かです。

そのため、会社で新人エンジニアを育てる場合に重要な視点は「いかに業務に楽しさを見出してもらうか?」というものであると考えております。

大きい企業などは数カ月間のエンジニア研修を受けられたりするそうです(羨ましい限り!)。しかし、開発業務で必要な知識を実装に活かす部分はインプットだけでは身につかないため、やはり上記のことは重要だと考えます。

新人エンジニアと接する時の重要なポイント

上で書いたように、私は新人エンジニアの後輩が仕事を楽しいと感じ、気持ちよく働いてもらうためにはどう接するべきか?という点で以下の工夫を行ってきました。

ここから新人エンジニアとの接し方について重要なポイントを3点紹介します。参考になれば幸いです。

1. 対等に接する

私は後輩と接するとき、対等になるよう常に心がけています。フェアであることが最も大切だと思うのです。では対等に接するとは具体的にどういうことでしょうか?

一つの例として、確信をもって答えられない質問が来たときにそれを正直に言うことであると思います。見栄をはらず、素直に分からないことを言うのです。

「こうだと思うけど、自信がないなー。悪いけどGoogleで調べてみて。うちも確信がないから後で教えてほしい」

という言い方をするようにしています。そうすると、咄嗟にぐぐって付け焼き刃な回答をする場合に比べて以下のメリットがあります。

  • 先輩も知らないことがあるみたい。自分である程度なんとかしないと。という自立心が生まれる
  • まずはぐぐる、というエンジニアにとって大変重要な習慣が身につく
  • 説明をしてもらうことによって、理解が進むし伝える力を鍛えることができる

また、たまに後輩に相談をしてみるというのも重要だと思います。例えば以下のような感じです。

「この新機能、こういうデザインで実装しようと思うんだけれど、どう思う?」

「なんでそう思ったの?」

問いかけというのは非常に強い力を持っています。問いを投げると相手は強制的に考えさせられるのです。リクルートでは、新人に対して「君はどうしたい?」という問いを投げ続けることで、主体的に考えて動く文化をつくっているそうです。

このように問いを立てることは「ビジネスに正解はない」ということを暗に伝えるにも良いと考えています。とにかく謙虚に接し、見栄を張らないこと。ただし、せめてひとつは先輩に尊敬できる部分がないと信頼を築くことが難しいので、OJT担当自身が日々能力を高めていくことも非常に重要です。

以上の話は、もしかすると例外があるかもしれません。例えば相手によって態度を変えるような新人だった場合は、見栄を張ってでも自分のほうが能力が上であると誇示したほうが良いのかもしれません。新人育成もビジネスと同じく”絶対的な答えがない”のが難しいところですね。

2. 「教える」ではなく「導く」ことを意識する

新人に教えるべきことはたくさんありますが、必要な知識すべてを教え込むのは不可能です。そのため、何でもかんでも教えることで力をつけてもらおうとするのは茨の道ではないかと考えています。

それではどうするかというと「教える」ではなく「導く」ことが重要だと思うのです。例のひとつとしては「この仕事をお願いしたらここで引っかかるだろうな、ミスするだろうな」という点を考慮して仕事をお願いするのです。

そうすると、引っ掛かりポイントに差し掛かったときに新人は自分でどう解決すれば良いか考えるようになります。例えば配列構造の重要性を認識してもらいたい場合は、

「このままの配列構造だと条件分岐が多すぎて、ロジックを追いきれなくなるだろうな」

と予想ができる仕事をお願いします。そうすると、以下のようなメリットがあります。

  • アウトプットを通して学習するので記憶に残りやすい
  • 実践を通したことで、主体的に解決する姿勢が身につく
  • 特定の問題(上の例では配列構造の問題)と、その解決策が身につく

常に育成にとって都合がいい開発項目がある訳では無いですが、どの項目をお願いしたらどのようなことを学ぶかな?と予想を立てて仕事をお願いするほうが、口頭で何かを教えるより何倍も効果が高いと感じています。

3. ビジョンやスタンスは押し付けるのではなく共感してもらう

仕事をはじめて数年経つと、自分なりのビジョンや考えが出てきます。しかしそれを押し付けてもデメリットしかありません。先輩と後輩という関係ですから、「分かりました」という答えを後輩から引き出すのは簡単です。

しかし、共感してもらわなければ意味はないのです。ビジョンやスタンスは共感するからこそ行動として溢れてくるものであるからです。また、無理な押しつけはストレスになり信頼を失ってしまいます。

それでも開発のスタンス(進め方)など、納得・理解してもらわなければいけない場面もあるでしょう。そのような場合は以下のような背景を話して、納得をしてもらうよう努めるのが大切であると思います。

  • なぜ自分がそのように考えたか
  • どのような背景でこのスタンス(やり方)を推進するのか
  • なぜ自分はこれを実現したいのか?

もちろん仕事ですから、共感せずともやるべきことはやってもらう必要があります。そこはあくまでシビアに見るべきであると考えます。ただ、納得・共感しない状態で行う仕事の質は下がるものですから、最終的にはどのみちやってもらうとしてもなるべく共感してもらうような努力は必要です。

それが上手く行けば、成果物の質があがり先輩の評価もあがりますし、後輩は質を上げようと自主的に調べ物をしたり行動を起こすようになるでしょう。

最後に

個人的には、上に挙げた中で「対等に接する」が最も重要ではないかと考えています。

「先輩たるもの、常に模範となりカッコ悪いところは見せていけない。ぐいぐい引っ張っていかなければ」

という先輩像は古いのかなーと思います。すごい能力があったとしても、自己中や人の話を聞かない先輩が尊敬されるということはきっと無いですから。逆に先輩が優秀すぎると萎縮してしまったり指示待ち人間を量産するというのはよく聞く話です。

まったく何も出来ない先輩というのも問題ですが、あまりに優秀すぎてもダメということですね。ほどよく手を抜くというか、分からないふりをしてみるのも良いのかもしれません。よほど後輩の性格が捻じ曲がっていない限り、対等に接していれば勝手に尊敬してくれると思いますよ。

優れたリーダの話

優れたリーダーは必ずしも能力的に優れているわけではない、というのはよく聞く話です。何でもかんでもこなしてしまう人に対して「自分がいなくてもなんとかなりそう」と感じるのは不思議ではありません。ダメ男に対して「私がなんとかしてあげたい!」と思う女性がいるように、ある程度抜けているところがあるというのも大切なのかもしれませんね。