「組織に向かない」から会社を辞めたい人に今一度考え直してほしいこと




「自分は組織に向かないから、会社を辞めてフリーでやっていきたい」と思う人は増えていますが、本当にそれがベストな選択なのでしょうか?僕は組織で働くことが出来ないひとがフリーで独立して成功するとも思えないのです。

確かにここ数年、日本において働き方の選択肢は多様的になり、会社員としてではなくフリーランスとしてはたらく人が増えはじめてきました。

その背景には、フリーランスと企業をマッチングするクラウドソーシングや人材仲介会社が増えてきたこと、youtubeやSHOWROOMなどを筆頭としたプラットフォームの発達で個人と個人、または個人と組織がつながりやすくなったことなどがあります。

ブログやSNSでもインフルエンサーが「会社員として働くのは時代遅れだ!」と煽っているのをよく見かけるようになりました。そういった中で「自分は組織で働くことに向かないからフリーになろう」と思う人は確かに増えはじめています。

しかし、僕は組織に向かないからと会社員を辞める人に、一度「待った」をかけたいのです。それは、組織で働くのが窮屈だからと会社を辞める前に確認をしてほしいことがあるから。ブロガーやインフルエンサーは煽るのが大変うまいので、会社員なんて辞めてやる!という気持ちになりやすいですが、少し冷静になって考えてみることがあると思います。

目次

組織で働くことに向かないのか、今の会社に向かないのかを再考せよ

そもそもですが「組織で働くことが向かない」は本当かを考えてみるべきです。周りの人の話を聞くと、実は組織で働くことに向いていないのではなく、今いる会社の社風や労働環境がマッチしていないだけという人がとても多いです。

例えばですが、組織で働くことが合わないと思う理由としてこのようなものがあるのではないでしょうか。

  • 面倒な社内イベントがたくさんある
  • 社内政治や根回しが苦手
  • 週5日も出勤したくない

これらは、本当に組織で働く上でどうしようもできないのでしょうか?下に記述する例でも説明しますが、一口に会社といっても非常に幅広くさまざまな文化がありますし、昔とは違う新しい働き方を認める企業も増えはじめています。

面倒な社内イベントがたくさんある

社内イベントにどれだけ力をかけているかは会社や業界によって異なりますし、イベントの雰囲気そのものも会社によって全く異なります。また、一見不要に思える社員総会などは、これから会社がどのような方向で進んでいくのかを再確認する大切な場でもあります。

それに、フリーランスになったり起業家になったりすると、どうしても人との付き合いが生まれてきます。自分の意志で参加を決められるという違いはありますが、基本的に何をするにしても人との交流の場を避けながら仕事するのは、なかなか難しいのです。

僕が在籍している会社もそうですが、あまり社内イベントがない会社も存在するので、社内イベントが嫌だから組織に合わないというのは少し違うように思うのです。

社内政治や根回しが苦手

これはまさに僕も含まれますが、エンジニアや研究職には社内政治や根回しなどが苦手な人が多いです。しかしこれは発想の転換で、社内政治や根回しが苦手ならば得意な人に任せるという考え方が大事になると思います。

フリーランスや起業家になれば、社内政治というものは無くなりますが、自分の提案を受け入れてもらうための根回しや関係構築はひとりで行わなければいけません。

世知辛いことですが、どんなに正しい提案をしても人間は感情で動くので、十分な信頼構築や根回しをしておかないと提案を受け入れてもらえません。しかも個人で仕事をしていると、そういった関係構築が得意な人に任せるということが出来ないのです。

個人でやっていくということは、苦手なことを他の得意な人に任せるということが難しいのは認識しておくべきだと思います。

週5も出勤したくない

一昔前であれば、正社員は週5で出勤するのが当たり前でしたが、最近は副業OKな会社も増えてきています。それも、新しいベンチャーだけではなく大手企業にさえ浸透しはじめていて、週4で出勤が認められている会社も増えてきています。

実際、僕の会社にも週4は別の会社の正社員をしており、週1でアルバイトに来ている人がいます。こういった複業のような働き方は今後も増えていくでしょう。確かにフリーランスの方が労働時間に自由があるのは事実ですが、会社員だからといって必ず週5で働かなければいけない、というのは昔の話です。

「組織に向かない」人はフリーランスのほうが向いていないことが多い

会社員を辞めてフリーランスや起業家になって成功したひともいますが、「組織に向かない」からと言ってフリーになって失敗している人もいます。

前述しましたが、人付き合いが苦手であっても会社員だと得意な人に任せることが出来ます。人付き合いが苦手であっても社外的には「営業」というプロが代わりにお客さんの所に行ってくれるし、社内的には「上司」や「先輩」や「同僚」に社内調整をお願いすることが出来るかもしれません。

しかしフリーランスだと人付き合いや仕事の獲得まで、自分でやらなければいけないことが多いので対人能力がある程度求められます。技術はあるけど対人能力に不安がある人、というのは組織に属したほうが活躍できるのではないでしょうか。

会社員でしか得られないメリットもある

また、会社員でしか得られないメリットがあるのも確かです。

定期的に収入が入る

一番大きな違いがこれかと思います。フリーランスだと仕事が無いときは収入が入らないので不安定です。一方で会社員だと定期的にいくらのお金が入ってくるか見通しがつきやすく、安定しています。もちろん、大企業であってもいつ倒産するかわからない世の中ですが、フリーに比べると会社員という立場はまだまだ安定しています。

日本の労働法では、雇用者が労働者を解雇するにはかなりの厳しい条件があるので、基本的に労働者が自分から退職を申し出ない限りクビにされることはほぼありません。(悪質な会社だと窓際部署に追い込んだりイジメを行うことで自主退職を促すそうですが…)

フリーになるためには、仕事がなくてもしばらく生活していけるくらいの蓄えが必要です。逆に、全然貯金がなくて仕事がないと死んでしまうという人は、会社員を続けるべきであると思います。

上司や先輩からスキルなどを学ぶことが出来る

会社には、上司や先輩など自分に持っていないスキルやノウハウがある人がいます。そういった人の仕事を間近で見て、学ぶことが容易というのが一つメリットとしてあります。

特に20代だとスキルもノウハウも無いけれども、伸びしろがあるということでそれなりに教育してもらえます。フリーランスになると、自分から積極的に情報を収集したり勉強することが必要ですし、自分で師匠や同胞を見つけることが求められます。

逆に言うと、尊敬出来る人が会社にいなかったり、教育もクソも無いというような学ぶものがない環境であるならば、さっさと転職をするべきではないかと思います。

組織がどう動くかを学ぶことが出来る

フリーになる場合、お客さんが会社になることもありえますし、起業したりオンラインサロンの運営をするならば組織づくりのノウハウが必要になります。

お客さんが会社であれば、自分の提案を通すために社内の権力関係や意思決定フローを理解することが大切です。自分で組織をつくるのであれば、なおさら組織づくりのノウハウが必要になってきます。

この組織の力学は会社によって異なるものですが共通している部分も多く、例えば一般社員クラス・課長クラス・部長クラス・経営者クラスがそれぞれどのような視点で物事を考えているかは一定の傾向が得られます。

そういった組織の力学について学べる機会というのは、会社員のメリットのひとつと言えるでしょう。

自分が合う会社に行ければ、イキイキ働ける

労働時間が極端に長い、人間関係が悪い、自由に発言できる風土がないなど、そういった成長や健全なワークスタイルを阻害する要因がある会社であればすぐに転職や独立などをすることをオススメします。実際、日本にはそのような極めて悪質な労働環境が多いことに大変悲しく思います。

一方で、労働時間が規定通りで人間関係が良く、自由に発言できる、スキルを持った尊敬できる人がいるというような職場があることも事実です。だから、どこの組織に行っても労働環境が悪いからフリーランスになるしかない、と早計に決めつけるのは待ったほうが良いと思うのです。

これからは会社に「属する」では無く「参加する」時代になっていく

そもそもですが、僕は「会社員」か「フリー/起業家」という二択から選ぶのが時代遅れだと考えています。例えば、会社員として週3で勤務をしながら、業務委託やアルバイトで別の仕事をするのも全然OKだし、実際にそのようなワークスタイルをしている人もいます。

つまり、これまでの会社員は会社に「属して」会社中心のワークスタイルを強制されていたわけですが、今後は自分がやりたいことが出来る会社や組織に「参加」するような時代になっています

また、個人にはない会社のインフラ(人や情報、お金)をうまく利用するという発想も面白いのではないでしょうか。会社のお金や人的リソースを使って事業を立ち上げることは、一人でゼロから事業を立ち上げることに比べると難易度低めです。

半会社員的な生き方や、会社をうまく利用するような生き方も視野に入れながらこれからのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。