【カメラ】なぜライカは高い?改めて考えるライカの価値




ライカといえば高級というイメージを持つ方も多いと思います。実際ライカのカメラは大変に高いので、僕のような一般人は「金額に見合うものか?」という点でかなり吟味をするわけです。

僕が保有しているカメラはライカの中では比較的安いLeicaQ2という機種ですが、それでもコンデジで70万円以上するので、国産カメラに比べて高いものになります。

購入してからおよそ7ヶ月経ちまして、だいぶ外に持っていく機会もありました。そこで改めてライカに価格相応の価値はあるのか?どのような価値があるのか?についてまとめたいと思いました。

結論から言えば、私個人の価値観で見ると「価格相応の価値がある」と考えております。それが何故かについては、以下に理由を書いていきます。

目次

ライカのカメラの価値は多元的である

カメラの一番大きな役割は、現実をリアルに切り取ることです。そのため、カメラを購入するときは「どのような写真が撮れるのか?」という点を最初に確認するでしょう。一言で言えば「画質」です。例えば、カメラに詳しい方であれば購入するときに以下のようなポイントを見るかと思います。

  • レンズの開放値
  • レンズの収差
  • 高感度時のノイズ量
  • 色の出方
  • オートフォーカスの正確さ
  • 画素数

では、ライカのカメラはこれらの項目が抜群に優れているから高価でも買う価値があるのでしょうか?答えはYesでもありNoであると思います。

画質について

御茶ノ水付近。写真は軽量化のため圧縮しています

画質については文句はありません。ただ、私は素人ですので写真だけを見てライカかそうでないかを見極めるのはほぼ不可能だと思います。素人ではなくとも、写真だけを見て区別出来る人はあまりいないのではないかと思います。国産カメラも素晴らしい性能を持ったものが多いですし、デジタルに関しては画像処理技術がすごい速度で発展しているからです。

例えば、Photoshopには2021年版から「ニューラルフィルター」という機能が実装されました。これを利用すると被写体の表情を変えたり、解像感を上げるといった操作が簡単にできます。また、色の補正やシャープネスなどについても十分すぎるくらいに調整ができ、レタッチの幅も画像処理技術の向上によって年々上がっています。

そのような状況ですので、カメラメーカーごとに多少の癖はあったとしても大きな画質の差は出ないと言えるのではないでしょうか。もちろん、ライカは画質に大変なこだわりを持つ職人集団であるため、プロの方が見れば違いが分かるでしょうし、世界トップクラスの性能であることは間違いないと思います。

ただ、画質の良さと価格がきれいに比例しているかどうか?価格が国産メーカーの約2倍だから画質も2倍になっているか?というとそうでは無いと思います。

画質以外に目を向けて評価する必要性

そのため「コスパ = 画質の良さ ÷ 値段」と定義すれば、ライカはコスパが悪く割高であるという結論になるでしょう。価格が倍になっても画質が倍になるわけではないので、「画質の良さ」という1つの価値基準だけで評価するとライカはただの割高カメラになってしまうのです。

ここからがこの記事で一番伝えたい内容になります。それは、ライカが持つ画質以外の価値はどのようなものなのか?という点です。

ライカカメラが持つ画質「以外」の価値

カメラとレンズが小さく軽いこと

画質が優れているカメラであれば世の中に沢山ありますが「画質が優れており、かつ、小さくて持ち運びやすい」カメラというのは限られてきます。

ライカの画質に匹敵する写真を撮るには、いわゆるフラグシップモデルと言われる高価な製品を購入する必要がありますが、ボディーもレンズも大きめのものが多いことに気がつくでしょう。

「カメラの大きさはそんなに重要なのか?」と思う方もいるかも知れません。これはその通りで、使い方によって異なってきます。例えば以下のような使い方をする場合は、カメラが小型であることにそこまで価値を感じないでしょう。

小型であることが重要では無い
  • 写真スタジオで三脚を利用して撮影をする場合
  • 車で荷物を運び、三脚を使って自然風景を撮影する場合
  • 非日常を撮る場合(結婚式など)

一方で、以下のような使い方をする場合は小型であることがとても重要になります。

小型であることが重要
  • 旅行などカメラを持ちながら歩く時間が長い場合
  • 人が多い場所で撮影をする場合(花火大会など)
  • 日常を撮る場合

このように、常にカメラを持ち運び日常を撮る場合、カメラの大きさ・重さが重要になってきます。どれだけ画質が素晴らしくても、カメラを持ち運ばなければ高価な文鎮となってしまいますからね。

モノとしての品質の高さ

ライカが高い理由は「大量生産ではないためスケールメリットが無く原料費が高くつく」「1つのカメラやレンズに対して人件費が高いドイツ人が長い時間を費やしている」というのが大きいようです。

では、高い材料費と人件費によって生まれている価値は何かというと「モノとしての品質の高さ」です。ライカのカメラは工業製品というよりは芸術作品に近いと言われているようですが、たしかに手にとって見るとその通りであると分かりました。

ここで以下のような反論がしたくなる方もいるかと思います。

モノとしての品質が高くても、それは画質に影響しないよね?それであの価格はやっぱり高い

カメラに何を求めるかは人によって様々ですから、そのような価値観も当然であると思います。一方で、モノの質の高さに価値を感じるというのも正しいと思います。

カメラをつい手に取りたくなる、いつまでも触りたくなる、眺めていたくなる、持ち運びたくなる。そういった感情を引き起こす機能面以外の魅力がライカにはあります。これはUXデザインともつながる話でして、要するにプロダクトの価値はどれだけユーザの感情を満足させることができるかという視点で評価するという話です。

機能が良いというのは、ユーザがプロダクトの使用を通して満足感を得るための一つの手段です。機能は手段であって、目的ではない。では、ユーザが満足感を得られるためにカメラメーカーが提供できる機能以外の価値ってなんだろう?という問いの答えのひとつが「モノとしての良さ」だと考えます。

もちろん、モノとしての良さに興味がないユーザにとってはライカは割高となるでしょう。これは良い悪いの話というよりは、ライカの思想に合わないという話なので、そのような人は別の思想によって作られたカメラのほうが合うのです。

こちらはLeicaM10のメイキングです。かなりの部分を人の手でつくっていることが分かるでしょう。ライカカメラの製造工程では、職人が延々とフォーカスリングや開放値ダイヤルを回して調整している光景があるそうです。

そこに明確な品質基準はありません。職人が納得する状態になったときに、品質基準クリアとなるのです。実際LeicaQ2を使っていると以下のようなことに気が付きました。

  • カメラボディの曲線が滑らかであり、美しい
  • ボタンのクリック感やフォーカスリングの硬さなどが綿密に設計されている
  • 安価なプラスチックが利用されておらず、高級感がすごい

国産メーカーとライカはそもそも思想が違う

ここからまとめに入ります。ここまで書いてきたように、ライカは徹底的に画質と画質以外の価値両方にこだわることを大切にしています。つまり、国産メーカーとはそもそも思想が違うのです。(どっちが良い/悪いの話ではないです)

ライカ
  • 高価格だが画質以外にも徹底的にこだわっているカメラ
  • 少量生産による品質の確保
  • こだわりを追究したい人に使ってもらう
国産メーカー
  • 低価格で高画質な写真を撮れるカメラ
  • 大量生産による低価格化
  • より多くの人に使ってもらう

このようにメーカーとしての思想やターゲットユーザが異なるため、国産カメラとライカカメラを比較する場合には、多元的に価値を評価する必要があると思います。

国産カメラは低価格で高品質な写真を撮れるという方向性なので、画質に関係しないパーツには安価なプラスチックを使うことで価格を抑えたりしています。これはカタログスペックには載らない部分ですが、ライカのカメラと同時に持ってみるとカメラの高級感にかなりの違いが出てくることが分かります。

単純に画質だけで見るならば、ライカの値段は「ただのブランド料」となるでしょう。しかし、実は画質以外の部分にもこだわり、ユーザのUXを極限まで良くするための工夫があるという視点があると、見方が変わるのではないかと思います。

これはApple製品の価値を評価する場合などでも全く同じことが言えると思います。プロダクトの価値をさまざまな軸から見れることが重要だと感じています。