組織に属さない働き方は一般的になっていく

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今回の記事は「働き方」についての記事です。日本では組織に属して働く人が多数派であり、他の先進国においてもそれは同じです。(※アメリカなどの特殊な例を除く)

しかし、会社員がスタンダードな働き方であった日本においても、組織に属さない働き方が一般的になりはじめています。仕事のデジタル化が進んだことで、場所にとらわれずに働ける環境が整ったことが1つの要因としてあるでしょう。(参考:フリーランス実態調査2018

そしてこれからは、その流れはますます加速していくでしょう。その理由や考察についてまとめたいと思います。

 

目次

組織が個人よりも優れている点は?

そもそも組織としてビジネスをすることのメリットは何でしょうか。それは、結論から言えば「収益力」「信用力」「多様性」という点です。

「収益力」について

日本について考えてみると、高度経済成長期は人口が増え続け、しかも消費が美徳とされていたので、経済がぐんぐんと伸びていきました。そのため、モノを生産すればするほど利益が増え続けたのです。いわゆる工業化社会(あらかじめデザインした商品を大量生産するモデル)の恩恵を受けていた時期になります。

このように工業化社会が上手く機能している場合、リスクを取って新しいことを始めるよりも、会社に入って教えられたことをそのまま実行し、生産量をひたすら増大させるほうが経済的にメリットが大きかったのです。つくればつくるほど売れましたからね。

従業員は自動的に給料が上がっていき、経営者はスケールメリットを活かして利益が増えていく状況だったのです。

別の観点では、組織をより大きくして生産から販売までのサプライチェーンを一括管理することで、本来かかっていたはずの無駄な中間コストを削減できることができるようになります。

これは、コンビニのプライベートブランドがいい例で、生産から販売までを自社で管理ことでコストを削減しています。会社を大きくして垂直統合を進めることでスケールメリットが生まれるのです。

実際、平均年収を事業別で見た場合は企業規模が大きくなるほど高くなっているというデータがあります。より大きな垂直統合型組織になったほうが、ビジネスで利益を上げやすい環境だったのです。

「信用力」について

また、会社と個人では信用面で大きな差があります。

例えば、ウェブサイトの制作をお願いするとしましょう。大手のウェブ会社とフリーランスで料金と成果物の質がほぼ同じだとしたら、どちらに頼むのが良いでしょうか。フリーランスの方と知り合いだとか、そのような特別な事情がなければ、ほとんどの方は大手に頼むのではないでしょうか。

そこには、信用力という要因が効いていると思います。

  • 途中で仕事を投げ出されるリスクが低そう
  • 多くの従業員がいるので、高いスキルを持った人が裏でサポートしてくれてそう
  • 住所や電話番号を登記する必要があるので信用できる

組織は従業員が一人や二人辞めようともビジネスが続くので、実績とノウハウが溜まっていきますし、仕事を投げ出して逃げることができません。(零細企業はわかりませんが)

組織の場合はさまざまなステークホルダー(=関係者)が存在するので、個人に比べると仕事を投げ出されるリスクが非常に低いのです。

「多様性」について

人間は多様であり、それぞれ得意・苦手なことがあります。そこで、多様な人を集めてそれぞれ得意なことを行うことで、組織に多様性が生まれ、お互いの強みを活かし合うことができます。

コミュニケーション力が高い人が営業を行い、論理的思考力が高い人がエンジニアを行い、細かい作業が得意な人が事務仕事を行う、といったように「得意」を活かし合うことで、1+1が2以上になることもあるのです。

また、企業規模が大きくなるほど多様性は増していくと言われています。詳しくはデービッド・アトキンソンソンさんの著書「日本人の勝算」を読んでいただきたいですが、例えばリモートワークの導入率は、企業規模と相関しているというデータがあります。

大きい企業ほど収益力があるので、資金に余裕があって多様な環境をつくりやすいというメリットにつながるのです。

今後は「個人」が強くなっていく理由

組織としてビジネスをするメリットはわかりましたが、個人として働く人が増えていくのは何故でしょうか?その理由を記載していきます。

AIの普及

aiのイメージ

ここでは機械学習を行い、人間の判断を超えた統計的最適解をアウトプットしてくれるものをAIと書いています。AIは画像認識によって書類をテキストデータ化したり、売れる広告バナーを自動生成するなど、人間がやっている業務をこれから代行していく可能性が高いです。

これまでは情報処理をいかに素早く適切に出来るか、というのがホワイトカラーとして重要な点でした。しかし、これから人間の価値は、人の困り事を発見(= 課題を定義)し、解決する方法を生み出す力により重点が置かれていきます。

世の中の不(不満、不安、不便)を発見し、様々なアイディアを出しながら解決策を探していく過程においては、幅広い知見や経験が大切になってきます。しかし、業界を超えた幅広い知見は、会社や組織の中にいるだけでは得ることが難しいのも事実です。

業界を超えたコラボというものが次々に生まれてきています。例えば、食×自動車の領域ではUberEats、金融×ITの領域ではPaypalなどのFinTechサービスが生まれています。

そこで、多くの領域に知見がある、これらの複合領域を結びつける個人が非常に大切になってきます。個人レベルで見ていくと、様々な会社を転職して経験を積んだひとは珍しくありません。

中途入社者に期待することとして、他の会社のカルチャーを知っていることがあるように、業界や国を超えてさまざまなチャレンジを行った「個人」がより強みを発揮できるような世の中になっていきます。

実際、トップクラスのデザイナーである佐藤可士和さんなどは、慶應義塾大学・多摩美術大学で教授をしながら、楽天のCDO(Chief Design Officer)やセブンイレブンのブランディングなど、多様な領域で活躍されています。

多様な経験を積んだ個人が、まるでアーティストのように新しい領域を企業と生み出していくことがより重要になっていくでしょうし、転職というのもますます盛んになっていくことと思います。

5G技術の普及

スマートフォン

通信環境の進化も、今後の働き方を考える上で大切になってきます。次世代移動通信5Gは、4Gの100倍ほどの早さだと言われています。

いったい実用化されると何が起こるか。例えば、Skype・Hangout・Slackなどを利用したウェブ会議は、通信遅延が少なくなり使い勝手が良くなるでしょう。

現状だと、従業員同士の雑談がコミュニケーションが組織へのエンゲージメントを生んでいたり、チャットを行うコミュニケーションコストが大きいこともあってオフィスワークがスタンダードになっています。

しかし、技術の進化によって業務連絡ならばネットで十分、と考えるようになるのも近いでしょう。

そのような意識になれば、従業員を日本国内に限定する必要もなくなってきます。実際、エンジニア業務の一部をインドやフィリピンに委託(オフショア)するということも増えてきています。

変化が激しい現代において、「流動性が低い組織」は変化に対応できないというリスクを帯びることになります。そのため、会社組織という形態は残り続けると思いますが、組織とその外部を隔てる膜はより薄くなっていくことでしょう。

5Gによってより物理的な距離を克服した人類は、組織そのものの流動性が上がることによって、逆に「個人」という存在が強く意識されることになるでしょう。

それは言い方を変えれば「この人は何が出来るのか?」ということをこれまで以上に厳しい目で見られるということでもあります。

ライフスタイルの多様化

ライフスタイルのイメージ

個人のライフスタイルは、今後ますます多様化していくことでしょう。我々はすでにTwitterでひとりごとに違うタイムラインを見ているし、Youtubeでも異なるオススメ動画のラインナップになっているでしょう。みんなで同じテレビ番組を見ていた時代は終わりつつあります。

それに伴い、理想とするライフスタイルを提案する人がより増えていくと思うのです。

例えば、AIと3Dプリンターが普及すると、個人が注文したオーダーに応じて、個別に商品を生産していくことが可能になります。AIがプロダクト設計や商品選択を行い、3Dプリンターが制作するという流れです。ニュースのキュレーションアプリに表示される内容も、今後はデータの蓄積でよりパーソナライズされてくるでしょう。

そうすると、僕たちは“自分がどのようなライフスタイルを送りたいか”をみずから考えて、それにあった商品をAIに発注するようになります。

しかし、それを自分でゼロから生み出すのはなかなか指南の技。そこで重要になるのは、自分が憧れるような人を見つけることになるのではないでしょうか。

そこで強いのは、尖った「個」を持った人であり、自由に生きている個人です。個人として好きなことを追求し、それがライフスタイルとなっている人が、より多くの人に影響を与える重要なポジションになっていくと思います(もちろん、アンチも多くなりそうですが)

さまざまな背景を持った人が働けるようになる

例えば、これまでは育児中の主婦などは毎日フルタイムで働けない、通勤できないということで、オフィスワーカーとして働くことが難しい状況にありました。一方で、テクノロジーの導入によって、家にいながら働くことが出来る環境が整ってきています。

主婦や学生、あるいは定年後の人など、フルタイムで働くことが難しかったり、通勤する時間が無くて働けない人が、フリーランスや個人事業主のように、個人として働けるようになっていくのです。

日本は人口減少社会で労働者の数が減っていくので、「働きたかったけれど環境のせいで働けなかった」人の労働力をいかに拾い上げるかが重要になります。(もちろん働く側も賃金がもらえるのでWin-Win)

働き方の多様性を確保できない企業は労働者不足で倒産するので、そういった主婦などの個人の労働力をいかに活用していくか、という点が重要になり、結果的に個人で働く人が増えていくことになるでしょう。

限界費用の低下

現代では情報化社会が進んだことで、さまざまな限界費用が低下しました。要するに、これまでお金をかけなければいけなかったことが、非常に安く出来るようになったのです。

例えば、いま映像広告を出そうと思えば、iPhoneで動画を撮影して、無料のiMovieというソフトで編集して、Youtubeにアップロードするという流れで1人で実現できます。この制作に必要なコストは、初期費用としてのiPhoneとMacと電気代だけです。

一方で、情報化社会以前ではテレビ広告をつくろうとすれば、数千万円というお金がかかることもザラではありませんでした。とても個人で払える金額ではなく、企業でしかテレビ広告を打つことは出来ませんでした。

ポスター広告をつくりにしても、いまはPhotoshop CameraのようなAIが自動編集してくれる無料ツールが存在するので、クリエイティブ人材を雇う必要もなく、非常に安価で創作が出来るようになっているのです。

つまり言い換えると、これまでは資本を抱えた企業しか作れなかったモノ・発信できなかったモノが、個人でも十分に出来るようになったことで、企業と個人のギャップがゼロに近づいているのです。

企業にしか出来なかったことが個人でもできるようになれば、「じゃあ個人でもいいじゃん」ということで個人として活動をする人が増えるのは必然です。

おわりに

大企業に就職すれば人生安泰というロールモデルに洗脳されてきた僕らには、ライフスタイルのモデルが圧倒的に不足しています。

スローライフ(お金を使わずに生活する)的な幸せや、逆に好きなことを仕事にしてひたすら働き続けることで幸せを感じるといった個人個人に最適なライフスタイルが多様にあるはずです。

組織で働きたい人は、組織で働く。1人で働きたい人は1人で働く。そんなことが実現できる社会はもう近くに来ています。

(※2020.6.15追記)

2020年に入って新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことで、人々の生活様式は大きな変化に直面しています。特に東京ではLINEの全国調査をした結果、オフィスワーカーのリモートワーク導入率が50%に達していたなど、強制的にDXが進んでいるようです。(参考:新型コロナウイルス感染拡大に伴う職場・テレワークの現状について LINE公式ブログ)

このような緊急事態時においては、正社員として雇用を守られることのメリットが改めて見直されるとともに、フリーランスとして働く危険性も認知されるようになりました。

一方で、リモートワークが進んだことで、仕事に対する評価がプロセス評価からアウトカム評価に大きく移行する可能性が見えてきました。

今後、フリーランスが増えていくのか、やはり組織で働いたほうが安全だとして組織型に戻っていくのかはまだ分かりません。ただ「個人としてどのような成果を出せるか」ということが、社員・フリーランス問わず強く求められるようになる流れは変わらないでしょう。

そういった状況で重要になるのが、ひとつの組織と溶け合うように一体化した労働者ではなく、様々な環境でいろいろなチャレンジをした「個」と尖った人材であることは引き続き変わらないと思います。

組織の一員か、フリーランスや個人事業主かの違いは、ただの雇用形態の違いであって、結局は「あなたは何が出来るの?」という点がどちらにも求められていくということは、これからのキャリアを考えていく上で重要だと思いました。




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