「成長するためには残業をしたほうがいい」は間違いだ




経済が不安定になり年功序列が崩壊をはじめたことに伴って、今の20代や30代の人は「成長する」ことに対しての欲求が強く、どのような働き方をすれば成長できるのかを大変気にしているように思います。

ここ数年は「残業」や「働き方改革」などのワークスタイルに関するワードが大変注目されていますが、果たして成長するために長時間働くというのは、合理的なのでしょうか?「たくさん働く=成長」なのでしょうか?結論から言えば、長時間は成長にはつながりません。

目次

成長の速度は残業によって鈍る

もし「単純作業を長時間続けられる忍耐力」をつけることを「成長」と定義するならば、残業は成長のひとつの手段になりうるかもしれません。

しかし、多くの人にとっての成長は、営業であれば「顧客の要望を引き出す力」や「社内と協力してより高い成果をだす巻き込み力」、エンジニアであれば「開発力」や「スケジュール管理力」、経理であれば「効率的な仕組みを作る力」や「ミスしないための集中力」など、忍耐力以外の力で仕事の質を上げることを指しているのではないでしょうか。

その場合、残業をすることで成長をすることは無いばかりか、度を越してしまうとマイナスの効果になってしまいます。

残業が成長につながらない理由

では、何故残業が成長につながらないのでしょうか?それを説明していきたいと思います。

仕事を効率化しようとしなくなる

残業をする前提で仕事をすると、仕事の効率化をする意識が低くなっていきます。何故なら、デッドライン(締切)が無いと、知恵を絞って効率的に仕事を進めようという意識になりにくいからです。

逆に言えば、締切を設定することで人間の集中力を普段よりも高めることが出来ます。例えば、学生のときにテスト直前は集中力が増している気がしませんでしたか?あれは、デッドラインが近づいたことで何とか間に合わせようという意識が働き、実際に集中力が増しているのです。

では、仕事の効率化への意識が落ちると何故成長につながらないのでしょうか?それは、そもそも成長とは単位時間あたりの創出価値を増やすことであり、言い換えると同じ質のアウトプットをより短い時間で生み出せるようになることだからです。

そして、同じ質のアウトプットをより短い時間で出すには

  1. 仕事を反復して体に覚えさせることで処理の速度を上げるというプロセス
  2. そもそも仕事のフローを変えてしまう(効率化する)

という2つのアプローチがあります。

例えば、いま宅配ピザのお店を個人で経営しているとして、なるべく早く効率的にお客さんへピザを届けたいと思ったとします。このとき、配達の経験を積んだことでバイクの腕が上がり、効率的なルートを発見したことで早く配達できるようにすることを1つ目のアプローチとするならば、そもそもバイクを使わずにドローンで配達してしまうというのが2つ目のアプローチになります。

1つ目も重要ではありますが、2つ目のアプローチは劇的な改善をもたらすことが多いのでより重要です。ホワイトカラーに求められるものは、主に2つ目だといっても過言ではありません。この効率化する力こそが成長のために必須ですが、残業をしてパフォーマンスが落ちている状態では効率化を行うことが出来ません。

1つ目のアプローチは何年も経験を積んでもいずれ限界にあたってしまいますが、2つ目のアプローチが出来ると劇的に改善を出来たりします。仕組みを変えて効率化をしていくのは、まさにホワイトカラーに求められるものですが、頭を使う必要があるのでパフォーマンスが落ちている状態が続くと、力を注げなくなってしまいます。

まとめると、単位時間あたりのアウトプットを上げるためには、プロセスの中を最短で突き進むために反復して慣れるアプローチと、そもそもプロセス自体を変えてしまうアプローチがあり、後者を行う力を身に着けなければ自分の市場価値が頭打ちになってしまうということです。

視野が狭くなる

残業の時間が増えると、仕事以外をする時間が減ります。そうすると、人としての経験の幅が狭くなり視野が狭くなっていきます。例えば、僕は将来経営をやりたい人はアートの勉強をすべきだと考えています。

何故ならば経営でいちばん大切なことは、自分が実現したい世界をコンセプトとしてまとめ、従業員に伝えること。これはまさにアートと全く同じ取り組みです。アートというものも色々ありますが、社会に対して問題提起を行うために作品を作ることがアートの大きな要素となっています。

例えばひとつの会社で営業の仕事をするだけ、しかも本を読むこともないという状況下では、営業としての力はつくかもしれませんが、そこからブレイクスルーを起こせる人材にはなりません。能力が頭打ちになってしまいます。

営業など人に会う職種こそ、様々なことを経験して会話の引き出しを広げることが大切ですし、他のどんな職種でも自分の仕事を俯瞰して見るために幅広い経験を積むことが必須なように思います。

どの職種であっても、今後ビジネスの上流に関わらないと淘汰されていきます。いま正社員がやっているような仕事を、将来はバイトを雇ってAIの管理をさせることで出来るようになることも十分ありえます。当然、バイトのほうが正社員よりコストが低く雇いやすいので、これまで正社員をしていた人はより付加価値が高くAIに出来ない仕事をするか、バイトの立場になるか、クビになるかしかないという状況にもなり得るのです。

幅広い経験を積み、領域を横断しつつビジネスを設計していく力をつけるには、残業をせずに時間を創出することが重要になってきます。

パフォーマンス・集中力が落ちる

そもそも人間の集中力には限界があります。集中力が切れた状態で本を読んでも頭に残らないし、ミスをしやすくなります。集中力が切れた状態でダラダラと会社で仕事をするならば、帰ってシャワーを浴びてスッキリした状態で趣味をやるなど気持ちを切り替えたほうが中長期的に得るものは大きいです。

毎日、体の疲れが残ったまま出勤をすれば、業務効率化など頭をつかう仕事に集中できない上に、アウトプットの質も下がるので良いこと無しです。

そのため、就業後は頭と体を休めて次の日にリフレッシュした状態で出社するのがベストです。残業をしすぎると、頭も体もヘトヘトになり、どちらもリフレッシュできないまま次の日を迎えることになるので、負のスパイラルが続いてしまいます。

ちょっとした注意点

集中力や疲労のたまり具合などは、個人差がある

ここまでつらつらと書いてきましたが、あくまで平均的な話であり個人差が存在します。例えば、いくら働いても疲れない体質の人もいるし、尋常じゃない集中力持続をする人もいます。

そういう人は長い時間働いていても、常に高いパフォーマンスを発揮してします。羨ましい限りですが、ベストな労働時間は人によって異なるので、いろいろと実験してみるのがいいでしょう。

いくらでも働ける人は先天的な要因もありますが、自分がやりたい仕事をしている、あるいは仕事が面白くて仕方がないという環境的な要因もあるので、仕事の内容や職場環境について常にアンテナを貼り、より良い状態に持っていくことが大事かなと思います。

成長はあくまでも結果である

成長することを目的にしてしまうと、「成長につながらそうだからやらない」といったように選択肢を狭めてしまうことがあります。会社員であってもフリーランスであっても、自分に与えられた仕事というのは自分の成長のために存在しているのではなく、誰かに対して価値を与えるために存在するものです。

DeNAの南場社長も言っていますが、成長は結果を追い求めた結果であって、それ自体を目指すものでは無いと思うのです。

とは言え、どうすればアウトプットの価値を最大化出来るかを追求すると、自分のパフォーマンスを最大化させるという点に帰結します。そして多くの人にとってパフォーマンスを最大化させる手段の一つは残業をなるべくしないことであると考えています。

最後に

残業はしない!と決めてなるべく時間内に終わらせようとする仕事のやりかたは、ゲームに似ています。そもそも、定時に帰れない雰囲気があるとか、仕事が多すぎてどうやっても定時上がりは出来ないというのであれば、転職をオススメします。

やっている仕事が好きで仕方ないのであれば長時間働くのも良いとは思いますが、体を壊すリスクがあるので適度な休みを入れることが中長期的に成長するためのコツではないでしょうか?