モノクロームによる写真表現の魅力について




最近、モノクロで現像するのにハマっています。

デジタルカメラやスマホが普及してから、誰もが簡単にカラー写真を撮ることが出来るようになりました。その恩恵もあり、世の中の写真はほとんどがカラーになっている時代です。しかし、そのような世の中だからこそ、僕はモノクロ写真をより楽しめるのではないかと思うのです。

instagramなどSNS上で人気なのは、彩度が高く・明るく・輪郭がはっきりした写真です。しかし、これらの写真を見て飽きてしまった人も多いのではないしょうか。最初はキレイだと感じていたキラキラした写真は、誰でも加工アプリを使って量産できるようになった今、魅力を感じにくくなっています。

そんな風潮の中で、他の人とは違う面白さを表現できる手段のひとつがモノクロ写真です。この記事では、モノクロの魅力について書いていこうと思います。

目次

モノクロ写真は被写体を幾何学的に捉えることが出来る

モノクロは白黒2色での表現のため、色の情報がカラーに比べると圧倒的に少ないです。カラー情報が少ないからこそ、被写体の幾何学的な美しさを見出しやすくなるのは、大きなメリットであると言えます。

僕は仕事でウェブのUIをつくることがありますが、色の情報というのはかなり印象が強いため注意が必要です。色に統一感を持たせるとアプリの操作が非常に楽になるし何も考えずとも次の操作を行うことが出来ます。

モノクロ写真はその人間の認知に強いインパクトを持つ色を取り除くことで、本来色に対して向けられていた意識が被写体の幾何学性や白黒のコントラストに向けられることになるのでカラーとは違った楽しみ方ができるようになります。

モノクロ写真は抽象的である

モノクロ写真は色情報がないので、鑑賞者が想像する余地が多く残っています。これを僕は抽象的であると表現しています。一方でカラー写真は色情報が含まれているので想像する余地が少なく具体的です。モノクロ写真は抽象的、カラー写真は具体的と言えるでしょう。

ここで考えたいのが、写真の表現力についてです。写真そのもので表現できるものには当然限度があります。ディスプレイの大きさ・性能、紙の大きさ、プリンターの性能など様々な制約条件があるからです。一方で、人の想像力は無限大です。

「良い写真とはなにか」という議論は古今東西されてきたわけですが、僕はひとつの要素として「感じる情報=解像度」が多いことだと定義づけています。そうすると、人の想像力を掻き立てるという要素があると良い写真に近づくような気がします。

想像力を掻き立てる、という点で言うとカラー写真はすこし具体的すぎるのではないでしょうか。移した被写体の色情報から輪郭まで、すべてが写真内で説明されているので、想像力を働かせる必要はありません。

また、人によって頭の中で想像する色のイメージが違うため、鑑賞者ひとりひとりによって感じ方が幅広く違うということになります。解釈の多様性を生むという点で、モノクロ写真は大変おもしろいのです。

アート写真の世界ではいまだにモノクロを好んでいる人が多いのは、アートが抽象性や解釈の多様性を志向する傾向があるからなのです。自分が見た景色をそのまま伝えたいのであればカラー写真が良いですが、自分が感じたことを表現して解釈は鑑賞者に任せるよというスタイルならばモノクロ写真のほうが向いていると思います。

モノクロ写真には時間性を感じる

一昔前は、写真といえばモノクロが当たり前でした。例えば教科書に乗っている戦前の写真などはすべてモノクロのものになっています。僕らは教育を受ける過程で「モノクロ写真=古い」「カラー写真=新しい」という価値観を植えつけられている一面があります。

そのため、寂び感・錆・レトロな街並み・古い建築物など時間の重みを表現したい時にモノクロ写真が活躍します。人をどこか懐かしい気持ちにさせるのがモノクロ写真の魅力です。

モノクロにはノスタルジーを感じる

一つ上の時間性の話ともつながりますが、モノクロ写真はどこか懐かしい感じがします。その理由としては、モノクロ写真に古いイメージ持っていることと、想像をする余地が残っている(抽象的である)ことが挙げられると思います。モノクロ写真の特性を複合的にすると「ノスタルジーさ」が出てくるのです。

特に夏の場合だと、被写体の幾何学的性質を浮かび上がらせやすいというモノクロの特徴が生きてきます。つまり上の写真にも写っている雲の立体感にノスタルジーを感じるのです。

日本は四季がある国なので、一年の中で自然の様子が大きく変化します。春になれば桜が咲くし、夏になれば木々の葉っぱで鮮やかな緑になるし、秋になれば紅葉して、冬になれば枯木が増えます。そういった変化に飛んだ環境だからこそ、時間的な変化を写真の中に反映しやすいのです。

モノクロ写真でありながら、季節を感じることが出来るというのは地理的な要因も相まってかなり面白いポイントであると思っています。先ほど、良い写真の要素の一つは想像力を掻き立てるというものだと書きましたが、それともつながってくるのです。

まとめ

つまり、モノクロ写真とは

  • 被写体の幾何学的性質を浮かび上がらせる
  • 抽象的であり想像を掻き立てる効果がある
  • 白黒であることそのものに古さを感じる
  • 季節感や古さという要因がノスタルジーを生み出す

というのが大きなポイントであると考えています。

モノクロ写真ではSNSでたくさんの「いいね!」がもらえないかもしれません。それでも、モノクロ写真は僕にとっては非常に魅力的なのです。人にいいねをされたとしても、どこにでもあるような量産されたゴミをばらまくよりは、自分が好きであり、少数であっても鑑賞者の想像力を掻き立てて楽しい気持ちに出来るような写真を生み出したいと日頃から思っています。