「いい写真」が持つ4つの特徴について




突然ですが「いい写真ってなんだろう?」と考えたことはありませんか。

一昔前はインスタントカメラなどのアナログカメラで写真を撮影し、カメラ屋で現像する必要がありました。しかし今はデジタルカメラの出現によって大量の写真を撮り、パソコンに直接保存をするというスタイルが一般的になりました。

そして、さらにスマホの登場によって誰でもいつでもきれいな写真を撮ることが出来るようになりました。一昔前だと「いい写真≒キレイな写真」という側面もありましたが、スマホによってキレイな写真が世界中で量産される時代になったのです。

つまり、これが意味することは、ただキレイに撮れているだけの写真を「いい写真」というのが難しくなってきたのです。では、そんな今の世の中における価値がある写真(=いい写真)とはなんでしょうか?

目次

いい写真が持つ様々な要素・特徴

まず最初にお断りしておきたいのが、当然ながら何をいい写真とするかは、ひとりひとり違うということです。自分の家族写真と、全く知らない家族の写真では、自分にとっての価値が異なるでしょう。価値とはこのように相対的なものです。

一方で、世の中には多くの人を惹きつけたり、深く考えさせられる写真があるのも事実です。そして、そのような「いい写真」にはいくつか共通する要素・特徴があるのです。

自分が好きな人が写っている写真

ポートレート写真には、過去の思い出を記録する役割や人・モノをつねに身近に感じることが出来るようにする役割があります。

例えば、家族の集合写真であったり、転校していった親友であったり、いま現在付き合っている恋人であったり、そういった人々と時間・空間を超えてつながれる写真は、その人にとってのいい写真と言えると思います。

これは上で書いたように主観的な要素が強いのが特徴です。修学旅行や結婚式、同窓会などの思い出を残し、人と人をつなげることが出来る写真。人の記憶はあいまいで時間とともに薄れていってしまうからこそ、思い出や人同士をつなぎとめる写真は「いい写真」と呼べるでしょう。

自然といろいろな想像が膨らんでしまう写真

写真は何かを記録するという機能的な側面もありますが、一方でアートとしての一面を持ちます。ポートレートであるならば「なぜこの人はこんな表情をしているんだろう?」「この人は何を見ているんだろう?」「この人は何を考えているのだろう?」「どのような人なんだろう?」など、被写体に対する好奇心が湧いてくると、いい写真だなと思います。

また、風景写真であるならば「この路地の先には何があるんだろう?」「ここはどのくらい寒いのだろう」「ここに行ったらどのような音が聞こえるんだろう?」とついつい色々な想像をしてしまう写真です。

「もしあの好きなこと付き合えたらどこに行こうかな」と想像をふくらませるのが幸福な時間であるように、わたしたちの想像力を呼び起こしてくれる写真というのは、写真を見た人に幸福な時間を提供してくれます。

想像力を呼び起こす、という目的で僕はあえてカラーで撮った写真を白黒にして現像することがあります。これはレトロな雰囲気を出すためだけではなく、「ここは一体どのような色彩になっているんだろう?」ということを鑑賞者に想像させるんです。

メッセージが伝わってくる写真

また、撮影者の意図が明確に伝わってくる写真は人を引きつけるいい写真です。特に社会問題などを扱うジャーナリストの写真に多いです。撮影者がどのような何故その被写体を選んでシャッターを切ったのか?どのような気持ちでシャッターを切ったのか?が伝わってくるものはついじっくりと見てしまいます。

例えば、戦争孤児の写真や、野良犬と一緒にゴミの山を漁る子供の写真などは、「現状を世界中に発信して世の中を変えたい」といった強いメッセージがあり、それを表現するために撮られた写真は人々の感情に強く訴えます。それが場合人の行動を変えることにつながるかもしれません。

逆に何もメッセージのないただのキレイな写真では、あまり心は動かないしすぐに忘れられてしまうものです。

なんらかの驚きや気付きがある写真

普段は見ることが出来ない断崖絶壁の氷河や、いつも通っているはずの道なのにいつもと違う雰囲気を写した写真など、なんらかの驚きや気づきを与えてくれる写真はいい写真と言えるでしょう。

ハッとさせる写真と言うのでしょうか。「ここに行ってみたい」という思いが生まれれば、それだけでやりたいことが一つ増えますし、普段つまらないと思っていた風景が少し角度を変えるだけで違うものに見えると気がつくことは、物事の見方をより多面的にしてくれます。

逆に言えば、普段見落としがちなちょっとしたことに敏感に気がついたり、人があまり行かないような所に飛び込んで写真を撮るようなフォトグラファーは、より良い写真を撮りやすいということができそうです。

いい写真に共通していること

ここまで特徴を並べてきましたが、ある共通点に気が付きましたか?それは、「人の感情を揺さぶる」「想像力を掻き立てる」というものです。

逆に、刹那的に消費されていく写真の特徴は「感情を揺さぶられない(印象に残らない)」「想像力を掻き立てられない」というものになると思います。

これはアートにも近く、写真を見たことをキッカケに想像による多幸感が生まれたり、物事の新しい見方を発見したり、なにか気づきを与えるなどの要素を持ちます。

いい写真とはなにか?を考えるようになったきっかけ

僕は、絶景が好きで世界各地旅行に行っていました。しかし、絶景ポイントというのは、ほとんどが観光地化されていて、世界各国から人が集まってきているんですね。そこで思ったんです。

「スタンプラリーのようにみんなで同じところに集まって、同じ構図から撮った写真に価値はあるのか?」

実際に「リアルト橋」とか「タージマハル」などのキーワードで画像検索をかけると、同じ構図で撮った写真がそれはもう無数に出てきます。

instagramが流行していることもあって、有名なビューポイントから写真を撮っている人がたくさんいるという側面もあります。

もちろん、撮影時の設定や現像によって全く同じ写真にはならないので、十分写真に個性がないかと言われるとそうではない。しかし、ネットでよく見るようなありふれた構図・場所の写真に感情が揺さぶられるかといえば、そうでも無いような気がします。

特別な天候の日に巡り会えたなど、なんらかの偶然性があるか、他の人が撮った写真よりも圧倒的に見栄えが良い写真を撮ることが良いかもしれませんが、それはハードルが高いですしなかなか狙って出来ることではありません。

人の感情を動かすには、ただ有名どころに行って写真を撮るのではなく、少し周りの環境に対する自分の中の感度を上げて、ちょっとした気付きに対してシャッターを切る。それがいい写真に近づくコツではないかと思うのです。