【コラム】情報による真の社会変革はまさに今から起こると思う




コンピューターが「パソコン(Personal Computer)」として一般家庭で使われるようになってから20年近くが経ちました。2000年に入った辺りから、パソコンや携帯電話が普及して情報化社会に入っていきました。

情報化社会になることで世界が大きく変わる!ということは口酸っぱくなるほど世の中の様々なシーンで言われてきました。確かに、この20年で世の中は大きく変わりました。

例えば、携帯電話が一人一台になったことでリアルタイムに物理的な距離を超えてコミュニケーション取れるようになったこと。インターネットによって、図書館に行かなくても情報にアクセスできるようになったこと。しかも世界中にあるありとあらゆる情報です。

そして、iPhoneの登場によって電話やカレンダーがアプリケーションの一つになりました。その他にもメール、方位磁石、本、メモ、そういった様々なモノがスマホというハードウェアの上に、アプリケーションとして実装したことで人々のライフスタイルは大きく変わりました。

もはやスマホなしで待ち合わせをすることは困難ですし、Google Mapが使えなければすぐに道に迷ってしまいます。そして、SNSの普及によって世界中の人が活発に交流するようになった結果、映画やドラマといったコンテンツを消費して共同幻想を楽しむ時代から、個人の情報を発信して自己顕示欲を楽しむ時代に変わりました。

確かに、ここに挙げたものだけを見ても大きな変化だと言うことが出来ると思います。しかし、本当の意味での情報革命はまさに今(2020年)から来ると僕は考えています。それは何故でしょうか。

目次

人と情報をつなぐインターフェース

現在、インターネットには膨大な情報がありますが、そこにアクセスするためのインターフェースは未だに限られています。ディスプレイやスピーカーといった出力デバイスですね。

世界中の情報に瞬時にアクセスできるようになったり、増強された計算機の性能によって、なにかの情報を取得したり、なにかの情報を別の情報へと変換することによって世の中は便利になってきました。

しかし、その情報たちは未だにインターネットの向こう側の世界にいることがほとんどで、フィジカルなこちら側の世界に出てきません。本当の意味で私達の生活に大きな影響を与える革命は、まさに画面の向こう側にいる情報が物理的な世界に影響をもたらしてくることを指すのではないでしょうか。

サイバー空間からフィジカル空間へ

サイバー空間から情報がフィジカル空間に飛び出してくる兆しはすでに見え始めています。

例えば、3Dプリンターは計算機内で作成した3D情報を基に、3次元の物理物体へと変換する装置です。サイバー空間内で作成したデータをインターネットで全世界で共有することで、同じ物を世界中の人が各地でつくれるようになります。

自動運転はまだ実用化されていませんが、さまざまなセンサーによって自動車の周りの状況を検出し、人や障害物を避けながら走行するのが自動運転です。これも膨大な計算力で学習したモデルを用いて人の動きや障害物を正確に計算して、自動車を制御するというサイバー空間からフィジカル空間へ情報が出てきた例です。

現在のノイマン型コンピューターでは、いかなる情報も最終的に0と1のビットとして処理されるので、その原理上汎用性が非常に高く、シンボル化できるものであればすべて扱うことが出来ます。

例えばテキストについて考えてみると、ASCIIコードでは「A」が65、「B」が66というように文字と数字を対応づけることで計算機での処理を可能としています。画像の場合はピクセルという単位で区切り、色と数字をあらかじめ対応付けさせておくことで表現することが出来ます。

これまで音声を認識してテキストに変換することは難しかったのですが、アルゴリズムの改善によってかなり精度が高まってきています。iPhoneやMacのSiri、Googleドキュメントの音声自動認識など、一般向けのサービスでも触れる機会が非常に増えました。

コンピュータービジョンにおいては、リアルタイムで人の顔を認識出来るようになり、まさに計算機が環境情報を読み取り、情報処理を自動で行う仕組みが整いつつあります。

これまでの情報活用とこれからの情報活用

ここまで述べてきましたが、端的にいうとこれまでの情報活用は、人間がディスプレイから情報を取得し、人間が解釈し、人間が情報に基づいて実行することで行われてきました。

例えば美味しい料理を作ろう!と思ったとします。今であれば、インターネットでレシピという情報を得るところまでは出来ますが、2人分の分量を4人分に変換して、スーパーで材料を買って、実際に調理するところまで全て人間が行っています。

しかしこれからは、人間の役割はもっと短くなるかもしれません。例えば料理をつくる例でいうと、作りたい料理を決めたら自動で必要分量が計算され、ネットスーパーから即日配達されるなどです。さらに言えば、料理する器具にコンピュータが取り付けられることで、料理そのものも自動化が進むかもしれません。

そうすると人間がやることは、食べたいレシピを選ぶことと、何人分作りたいかを入力することと、届いた材料を料理器具に放り込むだけになります。

これまでは情報の取得について発達してきましたが、その先の処理は人間がやっていた部分が多かったと思います。しかし、情報が現実世界に染み出してくることによって、まさに革命と言えるような大きな変化が起こるのではないかと考えています。

さいごに

僕は仕事でデータ分析を行うことがありますが、やはり重要なのは分析して新しい情報を得る…だけではなく、どのようにアクションにつなげていくかです。

情報を得て、それを基に動く。そのプロセス自体が自動化されれば確かに革命だと思うのです。一方で、現実の世界に計算機の影響がにじみ出てくるということは、それだけリスクがあります。自動運転であればエラーで人の命を奪ってしまうかもしれません。

フィジカルな影響力を持つということはそれだけ難易度が高くリスクも高いという面があるということを忘れないように心がけようと思います。

サイバー空間からフィジカル空間へどう設計して恩恵を受けられるようにしていくか。そのようなことを考え、実装していきたいと考えています。