新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックによって、特に都市部を中心として在宅勤務の導入が進んだり、人との距離を置くことがマナーになったり、僕たちの生活様式は大きく変わりました。
法律上は外出を強制するものではない「自粛要請」にも関わらず、多くの人が外出を控えたおかげか、日本は世界の中でも稀に見る封じ込めに成功した国だと言えるでしょう。
そのおかげもあって、緊急事態宣言を解除することが出来ましたが、そこで目に入ってくるのはBeforeコロナに戻ろうとする人々です。今回はこのことについてまとめたいと思います。
目次
パンデミックが来て分かったこと
パンデミックは多くの人の命を脅かし、医療関係者などに多くの負担を与えてしまうものです。一方でだから何もかもが悪いと否定して、台風のようにやり過ごすのではなく、せっかく台風が来るんだったら風力発電くらいしてやろうと、余力がある人が少しでもこの状況をうまく活用していくことも重要だと考えます。
今回のパンデミックで、これまで後回しにしていたことによるもろもろの不備が表面化してきました。僕たちはひとりひとりが、自分の立場から見えてきたそのような不備に向き合うべきだと思います。
例えば、マイナンバーを口座と紐付けて管理していなかったので特別定額給付金をすばやく支給することが出来なかったり、在宅勤務のほうが快適に働ける人が意外と多かったり、印鑑がいかにDXを妨げるものなのかを認識したり。
これらの課題は、Beforeコロナ時代から存在していて、誰も気が付かなかったという訳ではありません。しかし、そこに実感がなく後回しにされていただけなのです。
パンデミックによって上記のようないわゆる生産性が低い原因となりうるような謎の同調圧力や文化が可視化され、また都市のように密な場所に人が集まる危険性についても再認識されました。
我々は、この自然によってもたらされた緊急事態によって、これまで後回しにしていたことがどれほど重要だったのか気が付かされたのです。
失われた30年がそんなに恋しいか?
このパンデミックを通して、世の中の企業は2種類に別れました。例えばGMOや日立のように、このパンデミックをきっかけに新しい働き方や新しい評価基準に変えていこうとする会社。一方で、多くの会社はまた意味もなく社員を出社されて、これまで通りに働きたいと思っているようです。
もちろん、業種や職種によって働き方の柔軟性は異なります。しかし、例えばデザイナーやエンジニアのようなリモートワークが可能であり、かつ多くの人にとってリモートワークで生産性が上がるであろう人たちでも出社を強いられていることが多いようです。
確かに、リモートワークにはデメリットも存在します。雑談をする機会が無くなってしまったり、通信環境によっては遅延が発生して話しにくいことなどがあります。
しかし、だからといってそれほどまでにBeforeコロナは良かったのでしょうか?Beforeコロナの時代とは、言い換えれば「失われた30年」のことです。1990年代から今に至るまで、日本のGDPは人口を考慮してもおよそ3%の伸び、一方でアメリカとイギリスはおよそ100%も伸びています。
この失われた30年は、新しい情報主体の社会にうまく適応できず、生産性を上げることが出来なかった暗黒の時代とも言えるでしょう。要するに、なんとなく出社してなんとなく評価してなんとなく仕事することを繰り返していたのです。
JINS MEMEの研究によると、オフィス・公園・カフェ・コワーキングスペースで眼球の動きを計測して集中力を想定した結果、オフィスが最も低いという結果が出ています。
JINS MEME algorithm for estimation and tracking of concentration of users
その理由としては、頻繁に人に話しかけられるからとのことです。確かにオフィスは人の話し声が聞こえたり、無遠慮に話しかけてくる人がいるので、集中しようと思ってもなかなか集中できないのではないでしょうか。
これは本で読んだ情報ですが、アメリカではある程度まで昇格すると個室がもらえるようになるそうです。土地が広いアメリカだからこそという部分もあると思いますが、それほど一人で集中できる環境を大切にしているとも言えるでしょう。
我々は、このパンデミックを機に「そもそも働くとはなにか?」「雑談による情報共有と一人で作業するときの集中力を両立させるにはどうすればいいか?」という30年も後回しにしていたことを根本から見つめ直さなければいけない時期ではないでしょうか。
我々の失われた30年は、経済的に言えば失敗としか言いようがないでしょう。何故失敗したと分かっているのに、わざわざBeforeコロナに戻ろうとしているのか?「評価システムなどを考え直すのが大変だから一旦慣れている環境に戻したい(そしてあわよくばそのままにしたい)」という声が聞こえてくるのは、思いすぎでしょうか。
なんのために働くのか、どのように働けば社員のパフォーマンスが出てみんなが幸せになれるのか、そういった働くことに関する5W1Hを根本から考え直すチャンスなのに、なぜ失われた30年に戻ろうとしているのか謎が深まるばかりです。
じゃあどうすればいいか
まあ、ここまで書いてきたようなことは、YahooニュースとかNewsPicksとかによく載っているような内容です。これだけだとただの愚痴になるだけなので、じゃあどうすればいいかについても提案したいと思います。
組織に属している場合、組織では人事権と決済権という大きな2つの力が割り振られていて、基本的に昭和生まれの世代がより強い力を持っていることが多いです。つまり、組織にいる以上は、権力がある人を動かさないとどうしても物事が動きません。
そこで武器になるのが「データ」です。例えば、アンケートを実施して働き方について調査したり、JIN MEMEやFItbitのようなウェアラブルデバイスを利用して集中力を測定したり(回し者ではありません)、個人の成績データと出社頻度の相関を取ってみるなど色々と考えられます。
なんだ当たり前の話じゃないか、と思う人が多いかもしれません。しかし、政治を見ていれば分かるように、日本人の意思決定はなんとなくで行われることがほとんどです。これは、文化的な文脈もあるので良いところも悪いところも両面ありますが、ビジネス上はマイナスになることがほとんどです。
逆に考えると、データを基に考えることが苦手なので、データを基に論理立てて提案を行えば割と納得感を得てもらいやすい印象です。
「なんとなく、出社したほうがコミュニケーションが取りやすい気がする」
「なんとなく、頑張っていそうな人に高評価を与えればいいだろう」
そのような曖昧な部分をデータで攻めていくことは大きな武器となります。いまは様々なセンサーが安価で手に入る時代ですし、社用スマホも場合によっては活用できるかもしれません。
人を動かすためには、論理だけではなく感情面の配慮も重要なのは当然ですが、そもそも論理が通っていないと突っ込まれて終わってしまいます。感情で意思決定する人を説得するには、やはりデータの力を頼るのが非常に重要かなと思っています。