先日、Perfumeのドキュメンタリー映画「WE ARE Perfume WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」のDVD版を買って家で見ました。心が揺さぶられ、プロとは何かについて非常に考えさせられる作品で、ドキドキしながら見ていました。
実は2020年3月のPerfumeドームツアーに当選して参戦予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で見に行くことが出来ませんでした。そこで、今回DVDを買って応援しようと思いドキュメンタリーを見ることにしたのです。
あまりネタバレになりすぎないように紹介したいと思います。
目次
エンタメに本気で打ち込むということを教えてくれた
Perfumeは広島発の女性3人組ユニットで、小学生のときに同じアクターズスクールだった縁で結成されました。現在では日本を代表するアーティストですが、非常につらい下積み時代を経験していて、今でいう「地下アイドル」の時期が長かったのです。
今となってはPerfumeがテレビに出る機会も多く、仲が良くふんわりとした雰囲気のイメージがあると思います。しかしライブ本番前になると演技中には見せないくらいの真剣な表情・眼差しになり、まさにプロとしての一面を見せます。このDVDを買って一番良かったと思うのが、この舞台裏の彼女らを見ることが出来た点です。
そして、舞台裏の様子を見て感じたのは、彼女らは間違いなくエンタメに本気で打ち込んでいる一流のアーティストであるということです。「一流」の定義は人によって異なりますが、僕は以下のような人を一流であると思っています。
- 最後までこだわり抜く
- 細部までひたすらこだわる
- アクシデントや急な変更に対応できる
最後までこだわり抜く
コンサートや演劇など、その場1回限りのイベント物はトラブルが当たり前のように発生します。特に大きな規模になればなるほどリスクは増大します。そのため、前もってしっかりとプランを練ることでトラブルを減らそうとします。例えば、曲目などは事前にしっかりと決めて起きます。
しかしそうすると、実際に会場でリハをして感じたことや現地の空気をもとに、最善のパフォーマンスにすることがしにくいです。実際に現地に行ってはじめて気がつくことも多いのに、予めスケジュールを固めておくと変更ができないからです。
ライブ直前に曲を変えるというのは、非常にリスキーな行為です。しかし、それでもPerfumeはより良いパフォーマンスを行って盛り上げるために曲を変えてしまう。リスクを取ってでもより良いライブにしようとする姿にプロを感じました。
細部までひたすらこだわる
一流の人は細部までこだわります。自分の仕事が好きで誇りを持っていて意識が高いからです。Perfumeにおいてもその片鱗を何度も感じるような内容でした。
決してダンスを踊るだけではなく、衣装・舞台上での動き・MC・英語の挨拶・曲目など細かいところまでこだわり抜いて最高のパフォーマンスを行えるようにギリギリまで粘っていました。
もちろん、それはPerfumeの3人だけではありません。後述しますが、Perfumeとその裏方(チームPerfume)は一流な人ばかりで、それぞれ細部までこだわり最高のパフォーマンスを出していることを強く感じました。
アクシデントや急な変更に対応できる
また、プロとして一流な人はアクシデントや急な変更に対応できる人だと思います。まさにPerfumeも直前まで曲目を変更する余地を残したり、会場のディスプレイ故障が出演直前に起こっても冷静に対応する様子は一流でした。
時間がたっぷりある環境で、何度もやり直しができる環境だとあまり一流と二流で差が出ないものです。本当に差が出るのは、まさに失敗が許されない場で即興性が求められたときで、実力はここででます。
失敗できない場における即興性というのは、長い時間努力を積み上げていかないと身につかないものだと思います。落ち着いて判断して行動に落とし込むには、努力や成功体験の積み重ねによる自信や度胸が必要だからです。
チームPerfumeのすごさ
Perfumeはもちろん彼女ら3人もプロとしてすごいのですが、裏方も非常にレベルが高いプロが集まって成り立っています。
MIKIKO(振り付け)
Perfumeの3人が小学生のときに出会い、いまでもMIKIKO先生と呼ばれているくらい長い付き合いの振付師です。Perfumeの振り付けは非常に難しいらしく、たしかに見ていてもそうだと思います(踊りは素人なので難しさを理解出来ている気がしませんが)
最近の大きい仕事だと、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の恋ダンスをつくったり、リオの閉会式における芸術パートの担当を行っている日本を代表する振付師です。
中田ヤスタカ(音楽)
Perfumeの楽曲は日本が誇るトップクリエイターの中田ヤスタカさんがつくっています。きゃりーぱみゅぱみゅの楽曲も手掛けていたり、自身のユニットであるCapsuleの活動も行っています。
リオオリンピック閉会式で五輪旗引き継ぎ式の際に流れた曲をつくったり、ドラマ「ライヤーゲーム」のBGMを作曲するなど、幅広いフィールドで活躍されています。
ももクロなどの楽曲を手掛けたヒャダインさんが「嫉妬するくらいの天才」と評するくらい才能に溢れた人で、一度音楽を聞くと癖になってしまいます。
なるべく自分が愛着ある道具を使って楽曲を最後まで完結させたいというこだわりがあり、自宅にレコーディングスタジオを持っています。
Rhizomatiks Research(演出)
ライゾマティクスリサーチの真鍋大度さんといえば、メディアアート界で知らない人は居ないほどの実力者です。Perfumeは演出がすごいことで有名ですが、それはライゾマティクスの非常に高い技術力やクリエイティビティが支えています。
ライブ演出には世界最高峰の技術が詰め込まれており、GPSを利用した光のインスタレーションを行ったり、テキストマッピングを行ってスクリーンに表示したり、機械学習を利用した表現の最先端を行っています。
ライゾマティクスリサーチもリオオリンピック閉会式の五輪旗引き継ぎ式で演出担当をしていました。
照明や観客誘導など会場関係
ライブのときに必要な照明や観客誘導などの会場関係の方もひとりひとりが全力で出来ることをしている様子がありました。
ひとりひとりが高いプロ意識を持っているからこそ、素晴らしいライブが出来ているのだと感じで、自分自身ももっと頑張ろうと強く思えるようなプロ集団でした。
Perfumeはポップスではなくアートだ
ドキュメンタリーの途中で言われていたのですが、このDVDを見てまさにそのとおりだと思いました。確かにPerfumeは非常に売れているグループなのでポップスと思いがちですが、
- 音楽、演出、振り付け、ダンス、あらゆる面で新しい領域に挑戦している
- リスクを取って自分たちのベストを追求している
というところを見て、これはアートだと確信しました。
ポップスは「売るための音楽」
ポップスの特徴としては、「マーケティング」と「理論」が重視される点だと思います。要するに「いま世の中でどのような音楽が好まれているか、必要とされているか?(=マーケティング)」と、「どうすれば売れる曲を作れるか?(理論)」を大切にして音楽をつくりパフォーマンスしていくことです。
いわば、ポップスとは判断基準の大部分が顧客(=大衆)側にあり、そこにチューニングして音楽を作っていくことだと僕は定義しています。
アートは「新しい領域に踏み込む音楽」
一方でアートとは新しい領域に飛び込み、開拓を行うことです。ここで重視されるのは、「新規性」と「人の心を動かすこと」です。
その点で言うと、チームPerfumeはまさにアートであると感じました。音楽の中田ヤスタカさんは時代に合わせて音楽を変えていっていますし、ライゾマティスクスは最先端のテクノロジーを利用して表現を追求しています。
そもそも、アイドルグループに無表情でテクノを踊らせるという挑戦そのものがアートなのではないかと思います。「女性テクノ」というワードで真っ先にPerfumeが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
はじめは事務所であるアミューズに、アイドルっぽい曲を頼まれていた中田ヤスタカさんでしたが、保守的にはなっていけないという強い信念があり、アミューズに直訴しにいって揉めたそうです。
しかし、結果として彼女たちにテクノを踊らせ、木村カエラが彼女らをラジオで紹介したことが大ブレイクのキッカケになったそうです。
自分のポジションを持つということのカッコよさ
まとめになりますが、彼女たちの仕事への姿勢を見て感じたのは、自分なりのポジションを持つってかっこいいなということでした。彼女たちにとっては「ダンス」という表現ですね。僕にとっては「コンピューターサイエンス」になるのかと思います(まだまだ素人に毛が生えたレベルで恥ずかしいですが)。
25歳くらいまでは器用貧乏なキャリアを歩んできましたが、彼女たちを見ているとやはり専門性があるプロってかっこいいなという思いがますます強くなりました。
このDVDをカンフル剤にしながら、資格勉強や院試勉強を頑張っていこうと思いました。