写真を撮る人であれば「魅力的な写真を撮りたい」と思うものではないでしょうか。僕は素人のアマチュアカメラマンですが、最近はそのような思いでカメラを持ち歩きシャッターを切っています。
この記事では、魅力的な写真を撮るために大切なことはなんだろうか?という点についてプロカメラマンのドキュメンタリー動画を見たり、自身の経験から感じたことを基にして紹介していきたいと思います。
※この記事ではいわゆる技術的な話(絞りをどうするとか、どうレタッチするとか)は一切しません。具体的な技術の土台となる写真との向き合い方、スタンスについて考察した記事です。
目次
とにかく被写体ファーストになることが最も重要だ
写真が他の絵画や音楽などのアートと最も異なる点は、現実に存在するもの無しには成立しない点です。絵画であれば、自分の頭の中の風景をキャンバスに描くことができますし、音楽であれば自分の頭の中のメロディーを音符に変換することが出来ます。
写真の場合は、たとえ後でレタッチをするとしてもシャッターを切るという行為は常に現実世界のものに対して行われます。そのため、写真という分野はドキュメンタリーそのものとして発展し、ジャーナリズムと二人三脚となりましたが、それは今回置いておきます。
とにかく写真は現実のものしか写せないので、被写体が重要なのは言うまでもありません。
現代のカメラの性能であれば、キレイな被写体にカメラを向ければ、誰でも綺麗な写真を撮ることが出来ます。しかし、本当に被写体に対する洞察やリスペクトがあるかどうかで異なる写真になると思うのです。なぜその被写体を撮るのか、その被写体のどこに魅力を感じたのか?によって撮れる写真が変わってきます。
例えば、広い風景の中にぽつんとある被写体が存在したとき、その空間的異質さに魅力を感じたのであれば、広角レンズで背景の情報も含めて撮るという方法が考えられるでしょう。
一方で、その被写体そのもののテクスチャーや色彩に魅力を感じたのであれば、望遠レンズを使って被写体の周辺を思いっきりぼかすという撮影法を選ぶこともあるでしょう。
いかに、被写体と真剣に向き合うか?というのは、魅力的な写真を撮る上で重要になってくると思います。これは当たり前と感じる方も多いと思います。
ただ、僕が最近感じるのはSNSを見ていると、意識が被写体ではなくて自分に向いていると感じる写真が多いということです。つまり、被写体を美しく撮ったり、新しい表現で遊ぶということよりも、自分の写真のうまさやセンスの良さをいかに伝えるかという点に重点が置かれてそうと言うものです。(※個人の感想です)
現代のデジカメでは、絞りはマニュアルで設定するけれども、シャッタースピードやISOはカメラ側に任せているという撮り方が多いのではないかと思います。僕もそうです。そのため、写真を撮るという行為において自分自身のオリジナリティを表現することは難しくなっています。
この辺りはかなり頻繁にアマとプロの違いとは?といったテーマで話し合われていますね。もしカメラを自分で作って撮影している人がいれば、それは個性的で素晴らしいアートになると思います。
ただ、カメラはその製造の難しさからプロでもほとんどの人が既製品を使っているので、使っているカメラでオリジナリティを出すのが難しい特徴があります。レタッチもスマホで既成のフィルターを掛けるだけでそれなりに映える写真になります。
じゃあ写真のオリジナリティは、このような世の中でどこに出るかというと、それがまさに被写体であると思うのです。つまり、何を撮るか、どのように撮るか、被写体の魅力は何かといった点です。つまるところ、いかに被写体と向き合うかということなのです。
写真を見ている人が興味あるのは、写真を撮っている人ではなくて、そこに写っているものです。要するに被写体です。だから撮影時には自分やカメラの存在は透明となることが重要であると感じます。
もちろん、写真と一口に言っても様々なスタイルがあります。ストリートスナップでは、反射神経が問われるので被写体をじっくり見る時間などなく、とにかく撮りたいと思ったら撮ることが重要になります。
そのようなスタイルであってもシャッターを切ったからには何かしら理由があるはずです。そのため、撮影後にその被写体を何故撮ったかについて考え、深めることでその後の現像/レタッチ作業の方針などが大きく変わってくるものです。
被写体に向き合い、被写体について考える。自分のセンスをどのように伝えるか、自分のオリジナリティをどう出すという自分に対するベクトルではなく、その被写体の美しさはなんだろうということに向き合うことが魅力的な写真につながるのではないかと思います。
実際、僕がバックパッカーしていたときに使っていたカメラは10年以上前のエントリーモデルNikon D5000(中古で3〜4万円で買いました)とiPhone6Sです。
でも、そのような機材であっても、構図は今よりも適当だけれども、やはり何に興奮して撮ったのか、なんでシャッターを切ったのかがありありと伝わってきます。
撮影者はあくまで黒子であって、主役は被写体。そのスタンスが重要だと思うのです。
機材は重要だが重要じゃない
カメラという機材はそれ自体が美しく、素晴らしい技術の結晶だと思います。ただ、意識がカメラだけに向きすぎるのも良くないのかなぁと思います。
僕も理系ですしメカが好きなので、F値がどうとか収差がどうとかいう話が好きで勉強したりもしています。ただ、上にも書いたようにまずは被写体、だと思うのです。
写真はカメラという装置が必要になる以上、機材による制約から逃れることは出来ません。なので、カメラが重要ではないと主張する気は全くありません。
ただ、あまりに機材に意識が向きすぎると、よくありがちな「画質は良いんだけどつまらない写真」になってしまったり、機材の値段でマウントを撮ろうとする悲しい人になってしまいます。
繰り返しになりますが、機材は重要であり、性能が低いもので高画質な写真を撮ることは出来ません。しかし、フィルムカメラが再度人気になってきたように、写真の評価というのはカメラの性能に依存する解像度やボケ具合といったもの以外でも重要なことがたくさんあるのです。その一つがまさに被写体であると思います。
ライカのカメラを購入してみたところ、たしかにすごい解像度で写真を撮ることが出来ますが、やはり100枚中98枚くらいは「つまらない」写真、「現像したいと思わない」写真になっています。
「画質はいいけど、つまらない写真」や「それだけ機材にお金かければいい写真撮れるよね」と思われないように、いつも気を引き締めています。
ただ少し背伸びしていいカメラを買うことで、写真に対する意識や緊張感を高めるということもありだと思います。
おわりに
「どのように撮るか」「どのようにレタッチするか」という具体的な作業は、写真家としてのスタンスという土台によって方針が決まっていくものですので、一度立ち止まって考えることは重要だと思います。
もちろん、写真は自由ですからどのようなスタンスで撮っても構いませんし、趣味であれば自己満足で大正解です。ただ、自分や他の人が魅力的だと思う写真を撮るには、やはり被写体により深く向き合ったり、自分が写真を撮る意味を再考することが重要ではないかなと思います。