「自分にしか出来ない仕事」は組織にとって悪影響なのか




自分にしか出来ない仕事をしたい」という言葉をよく耳にします。これは自分にしか出来ない仕事があることで自分の存在価値を実感したいということが大きな理由の一つでしょう。

一方で、ある人しか出来ない仕事(=属人化した仕事)は組織にとってリスクであるという指摘もあります。確かに組織の中で属人化した仕事ばかりになってしまうと、誰かが退職したときに仕事が回らなくなってしまうなど大きな負担を強いられることになります。

では個人と組織で「◎◎さんにしか出来ない仕事」というものにどのように向き合えば良いのでしょうか。僕はなぜ属人化しているのかによって歓迎すべきか無くすべきかを分けるべきだと考えています。

情報を抱え込むことが原因で発生する属人化は悪

自分の仕事を奪われたくないとか、自分の存在価値をつくりたいという人がやってしまいがちなのが情報の抱え込みです。自分がどのような仕事をしているのかを隠したり、持っているデータを秘匿化することで、自分以外の人に出来ない仕事をつくりだしてしまうのです。

これははっきり言って組織にとっては害悪です。その社員が急にやめることになったり体調が壊れて休むことになった場合に、大きな負担を強いられるからです。これはひとつのリスクとも言えます。

また、属人化によるリスクはそれだけではありません。裏でミスをしてしまいそれを隠し続けていた結果、徐々に問題が大きくなってしまい気がついたときには既に手遅れということも起こりえます。

複数人の意見があれば解決できた問題であっても、情報を抱え込んでしまったことで問題が膨らんでしまうという危険性もあるのです。顧客とのやりとりなどについても、もしかしたら他の人と情報共有をすることでより良い方法や提案が出来るかもしれないのにその芽を潰してしまいます。

このような自分の存在価値が不安な人は、AI(人工知能)に仕事が奪われると怯える人でもあります。そのため、非効率な業務であってもそのままにしたがるし、新しいものを受け入れようとする器量もない。組織にとってはまっさきに何とかしなければいけない人材になるのです。

専門性が原因で発生する属人化は良いものである

一方で専門性が原因で発生する属人化は、組織にとってプラスの影響を及ぼすことがほとんどです。何故かと言うと、専門性がある仕事は大きな付加価値を生む可能性が高いからです。

インターネットが普及する前は、情報を収集するために図書館や本屋に行かなければいけませんでした。いまはGoogle検索で数秒で手に入る情報でも、昔は外に出て手間をかけて本を見つけ出して中身を読まなければいけなかったのです。

つまり情報収集のためのコストが高かった。そのため本に載っている内容を多く知っていることは、それなりの価値がありました。しかし今の時代はインターネットを通じて誰でも情報にアクセスできる時代になっています。これは言い換えると、ウェブで簡単にアクセスでき、かつ簡単に理解できるような内容はそんなに価値を持たなくなったいうことになります。

そのため今の時代に大きな付加価値を生み出すためには

  • 誰もアクセスできない情報
  • アクセスは出来るが理解するのに高度な専門性が必要な情報

が大きな力を持ってきます。誰でも気軽に手に入れることができ、すぐに理解して使えるような知識は他の人も同様に得ることが出来るので相対的な価値が低いのです。

新たに生まれた知見を論文にしたり、データをアーカイブするなど蓄積していくことは重要です。しかし、それを見て多くの人がわからないからと言って重要視しないのは大変にもったいないことなのです。限られた人しか分からないからこそ価値があがるものは、実は多いのです。Googleなど巨大IT企業が技術系のスタートアップを買収し続けているのも、そのような理由があるからです。

なぜ自分にしか出来ない仕事をしたいのか

正直なところ、僕も自分の存在価値を高めたいという思いはあります。とは言っても、情報を出し惜しみして隠すような人と仕事を一緒にしたいかというと、Noであると思うのです。自分の存在価値というのは、他の人がどれくらい自分を頼ってくれるかということ。

そこで僕は「自分にしか出来ない仕事をする」ではなく「一緒に働きたいと思われる人になる」ことに目標を転換してみたのです。この目標であれば、高い専門性を持った人材という意味も含まれるし、情報共有をしっかり行う人材という意味も含まれます。

社内の情報を溜め込んで自分の居場所を作ったところで、クビになったら何の役にも立ちません。それよりは情報共有をしたほうが人からの信頼も貯まるし、実力が伸びていくと思うのです。自己開示とは似た話かもしれませんが、情報をたくさんくれる人には、情報を与えたくなるものです。逆に情報を抱え込むと周りからの情報も入らなくなり、社内で孤立してしまうのではないでしょうか。

だからこそ「自分にしか出来ない仕事」をつくるために情報を抱え込んでいないか、今一度確認するのは大事なことだなあと思ったのです。